「酒と涙とジキルとハイド」

三谷幸喜作・演出の新作芝居「酒と涙とジキルとハイド」を見に行った。
面白かった。
ジキル博士が性格を変える薬の製作に失敗し、論文発表をごまかそうとする、時事ネタなんだかたまたまなのか判らない、ストーリーだ。三谷幸喜得意の「嘘がばれないように更に無理な嘘をつく」というシチュエーションコメディ。
役者が面白く、片岡愛之助藤井隆のツートップにヒロイン優香の主演三人に、助手の迫田孝也を加えた4人芝居で、4人とも演技が面白く笑いどころが多くあった。
三谷幸喜が、「BN☆GT以来の、ただただ笑えるだけで、あとに何も残らない芝居」と言っていたストーリーは、面白いし笑えたのだが、BN☆GTほどではなかった。
大爆笑というよりかは、おもしろおかしいコメディという感じだった。
決定的な違いは、ストーリーの芯の無さだ。BN☆GTには「主役の男女が結婚する。できれば両親に認めて貰うが、結婚自体は揺るがない。結婚式開催に向けて突き進む。」という芯のストーリーがあったので、最後のクライマックスに向けてどんどん笑いが積み重なっていった。
それに対してジキルは、「論文発表で嘘をつくためのテスト」という目的は早々に達成してしまい、そのあとはストーリーの軸が定まらない。ヒロインについた嘘を見抜かれないように嘘を重ね、残りはヒロインの本当の性格をどう扱うか、というこじんまりした話の塊はあるが、大きな軸がない。
なので、ストーリーのラストになっても、笑いの積み重ねみたいのが薄く、登場人物に感情移入しづらいせいか、大爆笑の連鎖とまではいかなかった。
そもそも片岡愛之助藤井隆で同じ人物を演じるというのは、ちょっと無理がある演出じゃないのかね。。。とも思った。
あと、公演期間終盤のせいか、ちょっと役者の喉が辛そうだった。
ただ、一本のお芝居としては、十分面白く、笑うところも多かったのですが、「BN☆GT」や「君となら」みたいな、「笑い声でセリフが聞こえない」みたいな感じではなかった。