「新検察捜査」

弁護士小説家の新作「新検察捜査」を読んだ。
可もなく不可もなくという感じだった。あまり面白いと言えるストーリーではなかった。
彼の著作で一番好きなのは「第一級殺人弁護」だが、これに比べるとだいぶ面白みに欠けるストーリーだった。
読み始めは面白そうな感じだったのだが、ストーリーに深みがない。
ネタバレでストーリーを一言で説明すると「妄想キャリア官僚が警察を使って医者と弁護士と検事を殺す」という荒唐無稽なストーリーで、話の展開に説得力がない。
保身と利権のことしか頭にないキャリア官僚が「自分の理想の政策を実現するために殺人を犯す」リスクを取るというストーリーは無理がある。しかもその動機が「犯罪のない社会の実現のためには、多少の犠牲はやむをえない」ではあまりに弱い。
あと、最後、本牧の倉庫に呼び出されてノコノコでかける検事というのも、ちょっと安易なストーリー運びだ。
少年との戦いもあれだけ引っ張った割にあっさり終わる。
最後死ぬ警察官は死ぬ必然性がない。
なんというか、全体的にちぐはぐなストーリーで、最後段々読むのがつらくなってきた。オチも弱い。
唯一面白い登場人物は、金と不動産と愛人をこよなく愛する老人弁護士だ。目的と行動が合致している数少ない登場人物の一人だった。
☆☆☆★★