「市場と法 いま何が起きているのか」

マーケットにおいて法はどうあるべきかという話について、現在の問題点と今後の展望を新聞記者の視点から(この手の本にしては)かなり判りやすく説明した本。ライブドア事件やブルドックvsスティールの話などを題材に説明している。

知人の書評に惹かれて読んでみました。面白いけど、ちょっと難しかった、、、。

この手の本は、スキャンダルやマネーの話ばっかで、判決や決定もただの結果のひとつとしてしか扱われないことが多いのですが、この本は、判例と論点を丁寧に引用・解釈してて、さらに(法律系の本にしては)易しかったと思います。

いちばん印象に残ったのは、ブルドックvsスティールの高裁決定(平成19年07月09日)にあった株式会社の定義に関する以下の一文。

『株式会社は,理念的には企業価値を可能な限り最大化してそれを株主に分配するための営利組織であるが,同時に単独で営利追求活動はできない1個の社会的存在であり,対内的には従業員を抱え,対外的には取引先,消費者等との経済的な活動を通じて利益を獲得している存在であるから,従業員,取引先など多種多様な利害関係人との不可分な関係を視野に入れた上で企業価値を高めていくべきものであり,企業価値について,専ら株主利益のみを考慮するという考え方には限界があり採用することができない。』

著者は、こういった判断を裁判所がするべきではないとも書いていたが、これはこれでブロックっぽい(wいい文章だなと思いました。

最近よく話題にする「株式会社は誰のものか」というネタに関連して、会社は株主だけのものじゃないんだぞ、という論理を展開するときに援用として使えそう。

あと『不利な事実でも隠してはならない。すべての事実を詳らかにして、その上でクライアントのために知恵を絞って戦うのがプロの弁護士だ』という台詞もかっこよかった。