著者黒木亮の陸上人生を綴った自伝的小説「冬の喝采」を読んだ。
むっちゃ面白かった。こんなにハマった小説は久しぶり。結構分厚い本なんですが最後まで楽しめました。
内容は、主人公の金山(著者の本名だそう)が北海道の中学・高校でのランナーとしての成長しつつ怪我に苦悩する。そして上京して名監督中村清率いる早大競走部に入り、瀬古をはじめとする同級生と箱根駅伝やインカレで勝利や記録を目指す。だいたいそんな話。70年代のほぼ実話。
「青春の門」や「三四郎」の青春小説的な面白さや、エリートランナーたちの生態を追体験できるスポ根的面白さもあるが、やはりいちばん面白かったのは個性的すぎる登場人物たちだ。
特に、主人公の金山、同級生の瀬古、中村清監督の三人。
「名門競走部の箱根駅伝復活を担う」というと熱い系を想像しますが、金山は非常に淡々としていて、スポーツ小説の主人公っぽくない。しかしそれがまた時折見せる熱意や悔しさを際立たせています。
そして瀬古。凄すぎる。そのバケモノじみた強さがチームメイトの目線で語られている。「いやー瀬古ってこれほど凄かったのか」と感心した。金山の「僕は…瀬古にはなれませんから」というセリフの重さは並みじゃない。
そして、最強に個性的な中村清監督。
彼の鬼軍曹っぷりはフルメタルジャケットも真っ青。「監督が草を食べろと言ったら食べるんだ」と言って草を食べたという有名な話も普通に出てくる。なんつーか、マジキチというのはこういう人を言うんだろう(w
でも、勝利への執念もハンパじゃない。名門競走部の復活のために命を捧げた指導は見もの。選手にとってはたまらないけど、読んでたら超笑える監督だった(w
ぶっちゃけ、この本は名監督中村清の物語と言ってもいいぐらいだ。
こんな魅力的な登場人物が揃った競走部。当時の写真を見てみたいと思った。そういえば瀬古さんの著書に当時の写真があった気がする、、、。
ほんと面白かった。
☆☆☆☆☆